« 今日の空 | トップページ | 我々は… »

ドラマみたいな出来事

…って、日常を淡々と流れる川に時たまぷかりと現れる泡みたいなものもあるんだな、と思った今日のお話。

------------

午後、眠気醒ましのコーヒーを求めに、わたしはエレベーターを待っていた。
エレベーターホールの向こうからおじさんがつかつかつかと早足で向かってきて、わたしの2〜3歩手前で急に止まった。彼は下向きの矢印が点灯したボタンを確認して、「なかなか来ないねぇ」と言った。
「ええ。そうですね」と、わたし。
部署も違うし名前も知らないけれど、つい先日、同じようにエレベーターを待っていたわたしがたまたま持っていた傘を見て「おい!外は雨降ってんのか?!」といきなり怒った口調で話しかけてきたあのおじさんだ、と思い出した。
その時は「今は大丈夫だけど、夜になったら降るそうですよ」というわたしの言葉にホッとしたように「そうか」とおじさんがひとこと返したんだっけ。

まもなく下りのエレベーターが到着した。乗り込むとすぐにおじさんはいきなりわたしに向かって言った。

「僕は、今日で会社を辞めるんだ」

冗談でしょ?!突然の告白に「えっ」と言葉を失っているわたしの目の前に、おじさんは手を差し出した。そっと開いた掌の上に、小さい社員バッジがあった。過去何度かリニューアルしたマークではなく、創業当時の、今となっては少しレトロな感じのするデザインのものだった。
外見だけで判断するなら、彼は今日で定年を迎えたと聞いても不思議ではないような印象を受けたが、はっきりと「辞める」と言ったし、それ以上の事は聞けなかった。
反対の手には、恐らく然るべき部署に提出するであろう書類があった。

「長い間、お疲れさまでした!」とお辞儀をするのが精一杯だった。人事部のある7Fで扉が開き、おじさんはニコっと笑って、エレベーターを降りていった。

_0011162

_0011161

« 今日の空 | トップページ | 我々は… »

コメント

内容が内容なだけに、あまり深く聞けない事ってあるよね
言葉の言い方、受け取り方だから、もしかして本当に定年だったのかも知れないけれど・・・
でも、精一杯のmuroちゃんの言葉、おじさんにしっかり伝わってると思うよ!

rosyさん
最初はね、ちょっと変わったおじさんだな〜って、思ったのだけど…
さいごの最後、もしいい印象を持ってもらえたのなら、こんなに幸せな事はないと思います(^^きっとおじさんにとっても私にとっても忘れられないだろう一日になりました。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/60608/15632521

この記事へのトラックバック一覧です: ドラマみたいな出来事:

« 今日の空 | トップページ | 我々は… »

instagram

  • Instagram

最近のトラックバック

無料ブログはココログ